行政書士の登録申請から登録証授与まで
○そもそも登録する理由
士業と呼ばれる資格は、有資格者として名乗って業を行うためには、事務所を設けて士会に登録しなければならないと、法律に定められている。
通常の資格は、その能力・職務経験や資格を有するだけの知識・技能があることを試験などによって確認するのだが、業として行える状態になっていることも求められるかららしい。
まあ、直近ある会社を退職して無職になったし、実家が構造的に事務所として開業可能な状態であったため「とりあえず無職状態は避けたい」ということで、申請することになったのである。
○行政書士に登録できる人は?
行政書士法第2条にある。
・行政書士試験(都道府県で実施、現在は指定試験期間に委託している)の合格した人。これは分かる。
・弁護士(法律に係る訴訟関連、ある意味オールマイティである)・弁理士(特許・商標などの登録)・公認会計士(法人の会計監査など)・税理士(税務署絡み)。これも分かる気がする。
・国及び地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び行政執行法人または特定地方独立行政法人の役員または職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して20年以上(高卒は17年以上)になる者。
…これがイマイチ分からない。つまり、公務員などの職歴があればOKらしい。
このため、申請書類にその職歴を証明する書類というものがある。退職時期が近づくと、この手の申請を持ち込む人が増えるらしい。
そういうわけで、有資格者という意味ではかなり多数いるわけだが、実際登録している人はだいたい6万数千名程度で、2015年だと減少傾向とのこと。
その理由は、申請の手続き内容を見るとなんとなく分かると思う。
○さて、申請はどうすればいいのか
実は行政書士に限らず、士業全般で申請手続きは各都道府県によって「異なる」。
大枠としては、各都道府県の行政書士会に申請→日本行政書士会連合会に提出→月2回程度の資格審査会を経て、登録→都道府県行政書士会から登録証などが渡される。
ところが、申請書の書式はほぼ統一されているのだが、その必要な枚数、コピーで良い枚数、コピーでも自署・捺印が必要な書類、写真とその枚数などが異なる。
このため、各都道府県の行政書士会のホームページまたは電話でその内容を確認し、できればファックス・電話で書類を送付してもらうか、直接行政書士会に行く必要がある。
ここでは、私が所属する北海道行政書士会の事例で語る。
http://1.33.176.181/ssi-def/S-001/dogyosei/modules/tinyd0/index.php?id=13
○書類の作成
・行政書士登録申請書
行政書士の登録申請では戸籍や登記で記載されたとおりに書く必要がある。
地番の場合、○-○-○といった記載はダメで、○丁目○番地○号 といった風に書かなければならない。
ほとんど、書式をみれば分かる内容なので困らないのだが、「事務所の名称」についてはルールがあるので、それにあったものでなければならない。
○○法律事務所のように弁護士業務をやるような記載はダメだし、商号・商標に引っかかるのも問題あり。類似資格(いわゆる士業)の名称を組み合わせるのもダメとのこと。
(そもそも、協業できる士業は弁護士・弁理士・公認会計士・税理士・司法書士・建築士・(土地家屋調査士)調査士・社労士・宅建主任者・測量士測量士・不動産鑑定士・海事代理士くらいしかない)
ここで、必要な書類の違いが発生する。
試験合格者は合格証、その他の資格では登録証明書(業として行っていることが条件なので、合格証ではダメ)。
行政事務担当経歴のある人は、公務員職歴証明書。これは、自分で職歴を書いて、証明するという捺印を組織のトップにしてもらう
あと、捺印欄だけでなく、この書類だけ捨印(空欄への捺印)が必要。ちなみに、捺印する印鑑は実印(市区町村での印鑑登録をしている印鑑)でなくても、いわゆる三文判でも大丈夫だが、通常官公庁や金融機関で使っている印鑑の方が良いと思う。
これに、収入印紙(国などへの申請納付になるので)を30,000円分、正本の一つに貼付する。3部すべて正本で、コピーではダメらしい。
ちなみに、これは通常の法人開業の登記と同じようなものになるので、事務所の住所や行政書士法人への所属も、きちんと記載が必要です。
(行政書士法人の開設を伴う場合は、当然登記する必要があります。つまり、定款なども事前に作って法務局に申請して、登記されなきゃならない。行政書士法によりまだ現時点では1人法人は認められないです)
・戸籍抄本・住民票の写し
これは、市区町村で申請すればすぐに出してくれる書類である。戸籍は登録する本人のみの「抄本」でよい。住民票の写しも本人のみ。ただし、本籍地を印字してもらう必要がある。(さすがに、住民票コードとか個人番号(マイナンバー)の印字は不要である。そもそも、それができることを窓口の人も知らないらしいし)
市区町村によって異なるが、たいがい各300円のはず。
最近は、申請時に通達によって本人確認書類(免許証など)の提示が必要である。捺印は不要が多い。郵送申請(定額小為替で手数料を納付・返信用封筒もつける)も可能。
・本籍地の市区町村が発行する身分証明書
ここでいう「身分」とは禁治産者・準禁治産者・破産者で復権していない、ということ。資格の欠格事由であるので、本籍のある市区町村で戸籍抄本とセットで取得できる。
これも、たぶん300円の手数料だったはず。
蛇足だが、「戸籍の付票」というものもある。戸籍を設定してから住民登録を延々と書いている書類である。ただし、市区町村の都合(電子化など)で途中からになることもある。
(ストーカーなどが、これを利用する人もいるので、その申請には制限がある)
・登記されていないことの証明書
…これって何?と思う書類である。
かつては身分証明書で足りたのだが、成年後見制度ができて成年被後見人及び被補佐人とする記録がないことを、東京法務局が証明することになったので、必要になったのである。
これを申請することができるのは各都道府県にある「法務局」。近所にある法務支局では受け付けてくれない。郵送の場合は、東京法務局で行う。
まあ、この書類を取り寄せる場合は、あまりないけど、官公庁でこの手の確認をする許可申請ではたまに必要になります。
手数料は1枚300円。収入印紙を貼付して納付します。(この点は手間がかからない。たいがい法務局の近くに郵便局があるし)
わざわざ札幌法務局(札幌駅からほど近い)に行きました。
ちなみに、この申請書に記載した氏名・本籍地などはそのまま証明書にコピーされて載りますので、判読が困難な記載はしてはいけない。(でも、下手な字であるのは仕方ないので、丁寧に書きましょう)
・履歴書
書式は一般的に使われるJISのものとは異なるんですが、だいたい同じようなことを記載します。きちんと写真も貼付し、署名捺印もします。
「無職」でもその期間を記載しなければならないです。
複数枚にわたる場合は、割印(当然申請書捺印の印鑑で)をする必要があります。このため、最小2ページなので両面印刷したものを用いた方が面倒でないです。
・誓約書
あえて、登録した内容が正しいことを宣誓するために作成します。
許可が必要な申請でも、似たようなものを提出されられることは多いです。ただし、資格の付与ですから結構重みがあるらしいです。
これも署名捺印が全書類で必要。その部分以外は、コピーしたものでいいらしい。
・顔写真
縦3cm×横2.5cmとちっちゃ目で他には使いにくい写真が必要になります。
北海道では6枚必要ですが…結構写真屋(マイナンバーカード用で1つ1,000円から1,500円)だとお金がかかります。自動写真機(たぶん700円)でも2回撮影が必要になるはず。
映像が鮮明なら、インクジェット用の写真用紙でも大丈夫なので、自分で撮影してもらってプリントアウトした方がいいかも。
・職印届
これにもきちんと規則があるんです。なにせ、いわゆる印鑑証明(法人向け)のようなものですから。証明書は出してくれませんが、作成書類とかに捺印する職印ですし。
県によっては大きさも決まっているところもあります。角印だけで、丸印はダメです。
文字も縦に3列で「行政書士」「氏名」「乃印」と刻印する必要があるとのこと。
都道府県行政書士会でもいろいろな備品の斡旋とあわせて作ってもらえるんですが、多少高いので材質など気にしなければ、ネットなどで印鑑を作ってもらった方がいいかもしれません。
斡旋で作る場合も、この届けは必要です。捺印・記載できない部分は空欄で良いです。
職印は、安くて2,000円弱、高いと何万円いきますかねぇ。まあ、オーダーメイドですので、それなりにかかります。
・事務所の所在確認のための書面
事務所を借りる場合は、当然使えることを契約したする書類が必要になる…までは理解していたんですが。
自己所有でも建物登記簿謄本または固定資産評価証明書等が必要になるんですね。
この他、使用承諾書等、賃貸借・使用賃貸契約書、共同・合同事務所届出書、管理組合の承諾書面などなど。
私の場合は、父の所有(親族の所有)だったので、使用承諾書で十分だと思ったのです。
ところが、たいがい建物登記簿謄本の所在地と住所表示は異なる場合が多いんです。
(地番と住所表示は、番や号の部分が区画整理事業を行うと、異なるようである)
このため、結局北海道行政書士会から電話が来て、「申立書」を記載して提出するように、といわれて、後ほどその書式書面が送付されてきました。
(市区町村発行の住居表示変更証明書なんて、期間が経っているので発行されないから)
まあ、両方の表記を書いて、署名・捺印するだけだけど。
ちなみに、「建物」登記簿謄本なので「土地」の謄本を取り寄せてはいけない。確か1枚400円。収入印紙で出せる。
登記印紙というのでも納付可能だが、たぶん額面が500円とかで余ってしまうので、もったいないから使わない方がいい。
(かつては、過剰納付の旨の記載が必要だったはず)
・事務所の位置図・平面図
これは、個人開業のみで必要らしいです。(違う場合もあるので注意)
位置図は、目標となる最寄り駅・停留所から事務所までの略図。これは分かる。
事務所の開業したときに、チラシなどに表記するなど使えそうなので、できれば手書きでなく、パソコンなどで見栄え良く書き上げた方がよさそうである。
(でも、手書きであわてて書いたけど)
平面図は、建物全体の図と建物内の事務所の位置及びそこまでの動線が分かるように表記したもの。
方位・長さの記入だけでなく、事務所内の机・いすなどの予定配置も書く必要があるとのこと。
これで、事務所がきちんと要件を満たしたものか提示して下さい、というものらしい。
幸い、玄関からすぐに事務所予定の2階部分に上がれるので、そこはクリアしているなぁ…と思って、とりあえず書いてみた。
ただし、いろいろ書いているうちに、寸法が間違ったり、方位を入れ忘れたり…2時間近くかかった気がする。
・事務所の外観及び内部の写真
これは都道府県行政書士会によって異なるんですが、北海道行政書士会では個人開業で賃貸借しない事務所では必要ないとのこと。
法人や個人でも法人等の建物内に事務所を設置する場合は、必要となる。(たいがい必要になる)
事務所のある建物全体の写真・入口付近で表札の掲示する場所が分かる写真・机や事務機器などの配置が分かる内部の写真 が必要。
当然、鮮明である必要がありますが、これくらいはデジカメやスマホとプリンターで何とかした方がよさそう。
私は、これを提出しなかったが。
・兼業している他士業の証明書等
同時登録して開業する場合は、発行後速やかに提出する必要がある。該当するのは開業している士業に限るので、人によってはすでに用意しているものになるかもしれません。
・FAX番号(事務所)届出書
まあ、必要なのは分かるけど、A4 1枚でこれだけの届出書というのは、もったいないというか…電話はあえて届出書がないのである。
・登録手数料等払込通知・斡旋物品申込書
登録手数料は、申請書貼付の収入証紙(30,000円)以外送金する必要がある。たいがい複数の銀行口座・ゆうちょ銀行(振替口座)または行政書士会に現金納付という形になっている。
登録手数料が25,000円。入会金が200,000円
都道府県行政書士会によっては、現金納付のみというところもあるので、注意が必要。また、入会金や会費が異なるので、この辺も注意が必要。
行政書士での業務として建設業などでの申請書式とか領収書・委任状などの書式の束を斡旋してくれている。
その他、名刺や事務所に掲げる看板・頒布用のポケットティッシュやメモ帳なども斡旋物品としてある。これらは開業後でも順次購入できる。
登録手数料・入会金と斡旋物品は、会費前納分(北海道の場合、3か月分18,000円)とともに申請書類提出後速やかに送金が必要になります。
(支払い方法と振込日を記載する)
そうそう。行政書士のバッジ(1個 4,000円)も最低1つは買っておく必要があるらしいです。
ただし「戸籍謄本、住民票の写し等職務上請求書」については、その取り扱いがやっかいなので、注意が必要。この請求書だけは1枚ごとにナンバリングされている。
結局、直前にこの請求書の用途などを確認する書面の提出が必要になりました。
軽い気持ちでこの請求書を使って取り寄せたら、もめるどころか、懲戒処分になりますからねぇ。(相続の関係確認、だけでは使わない方がいいと語られました)
そのため、請求冊数の制限があるし、使い方をきちんと把握され、場合によっては請求してもくれないことがあるらしいです。
(身分関係などを証明する書類ですから、そう簡単に職権だからといって請求できないはずなんですが、不思議とこんな書面がある)
・会費の郵便貯金からの自動払込制度利用申込書
年会費は、北海道行政書士会の場合3か月ごとに徴収するとのこと。この費用も結構かかるので、自動払込をお願いしているとのこと。
その後、別途記載・捺印をして郵便局に提出する用紙が渡されるので、1回30円(行政書士会負担)のこの制度を利用した方がいいはず。
○…で、いくらかかったかというと
登録手数料等・斡旋物品にかかった金額に、申請書の送料(レターパックプラスを使ったので510円)と官公庁での書類発行手数料を足すと、
私は296,256円かかりました。ざっくり約30万円。これだけの金額を工面するのは、確かに大変ですね。
斡旋物品を除いた額面通り必要な金額は送料込みで275,460円。
厳密には、これに書類申請のためにかかった交通費やプリンターなどコピー費もかかりますから、もう少しかかりますか。
ちなみに、これら書類を取り寄せたり記載したりして、提出したのは実質2日。2015/10/30にはじめて、2015/11/2には提出完了でした。
○申請後何があるかというと…
だいたい1か月半ほど登録手続きに時間がかかります。12月中旬に「登録する」という郵便物が届き、あわせて登録証交付式への参加の有無を確認する書類も届きます。
登録は月初め1日と形式的になっているようで、私は2016/1/1付けで登録になりましたが、証票など資格証明をするものは登録証交付式で渡されるとのこと。
(出席しない場合は、送付してもらえるらしい)
そうそう。行政書士試験合格証(原本)は、申請後すぐに返却してくれます。
○登録証交付式
こんな感じで、紹介されます。
http://1.33.176.181/ssi-def/S-001/dogyosei/modules/wordpress/index.php?p=404
実際登録証(賞状のような大きさの紙)を手渡されるんですが「先生」と呼ばれるのには、めちゃくちゃ違和感がありましたねぇ。
あと、こんな研修をやっているとか、行政書士はこういったことを注意した方がいいとか、報酬(事務所への掲示が義務づけられている)はどのくらいにした方がいいとか、2時間半ほどかけて語られました。(でも、想定したより短かったです)
政治団体への加入して欲しいという話もありましたが、その担当の方が用事があるということで、通常式の後半に設定されるのですが、会長の話の後すぐに話されました。このためか、いろいろあるので加入して欲しい、くらいで終わってしまいました。(年5,000円と他県より安め設定らしいです)
斡旋物品だけでなく、名札とか注意事項の書類とか、読んでおくようにという冊子など、結構な分量の書類を渡されます。
(一人一人会議室にある机にずらっと並べるくらいですから、結構多いと分かるはずです)
リュックに何とか詰め込んだんですが、掲示用の看板だけはさすがに大きすぎて、そのまま手で抱えて札幌駅までテクテクと歩いたわけで…
以上、ここまで事細かに書いている例はたぶん無いと思うので、挙げてみました。
2016年2月15日初出
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