マイナンバー(個人番号)制度の話(イントロダクション)


○それ以前の「住民基本台帳カード」とか「住民票コード」について

そもそも、すでにあずかり知らないところで、11桁の数字が全国民に割り振られていたのである。
その名は「住民票コード」。通知書が市区町村から届いているはずなのだが、たぶんそのことすら忘れ、通知書も紛失したか、部屋の奥底に置かれていた人がほとんどかもしれない。

住民票コードは、通知書以外で住民票の写しに依頼すれば表記することができる。年金受給手続き(この時は申請書への記載や住民票の写しへの記載が求められる)以外は、ほぼ意識して使われることのない番号だった。
実際官公庁では、この住民票コードとセットで住民情報を紹介するということをやっていたらしい。代表的なものは旅券(パスポート)の申請で、住民票コードを取り扱う住基ネットにいくつかの市町村が参加しなかったため、そこの住人は住民票の写しの提出を求められていた。(パスポートは当時都道府県で扱っていて、その窓口ごとにその旨の告知や記載の仕方の注意事項に書かれていた)
逆説的に考えると、あまり住民票コードは使われなかったのである。

・住基カードについて
住民基本台帳カード(以下住基カード)は、書面による官公庁での手続きでもあまり使われなかった背景もあり、そもそも発行してもらう人自体少なかった。
確か、発行できる人の3.7%にとどまったらしい。

住基カードは、電子端末での手続きのための「暗証番号(数字4桁)」を発行時に設定する。発行手数料として500円かかる。(2015年12月で発行を終了している)
有効期限は、発行日から起算して10年である。
また、ICチップに電子証明書(厳密に付与するのは都道府県知事名)を市区町村で加えることが可能である。これはさらに発行手数料で500円かかる。
ICチップにある電子証明書などのやりとりには、パスワード(英数字混じりで6桁以上16桁以下)を設定する必要がある。
さらに、パソコンなどで電子証明書を使うためには接触または非接触のリーダー・ライター(当時3000円前後した)を購入する必要があった。

・住基カードの電子証明書について
つまり、電子証明書を使ってもらうためには、結構お金がかかるのである。
このため、これを利用するのが前提だったe-tax(国税庁の電子納税サービス)の利用促進として、e-taxの利用者に対して初年度の申請に限り「5000円の還付(控除)」を行うということを数年間やっていた。ただし、この還付金額はほぼ住基カード・電子証明書の発行手数料とリーダ・ライター購入費用と同じくらいであり、それほどお得感はなかった気がする。

e-taxを行うためには、電子証明書やリーダー・ライターをそろえるだけではなく、パソコンにたくさんのソフトをいれなければならない。だいぶ前だと何度も再起動して複数インストールするため、1時間程度かかったかな。直近2015年になると、かなり楽にできるようになり、うまくできると30分かからずに対応できる。

でも、非接触のリーダー・ライター(Ferica方式で、交通系ICカードや電子マネーでも同様に使える)にもかかわらず、住基カードの電子証明書はアクセスがうまく行かないことが時折発生する。(電子マネーだと、その状態でもきちんと認識するのに…)そうなったら、再起動してあらためて認識させるしか手はないみたいである。(これは、マイナンバーカードの電子証明書でも同じである)

・本人確認書類
本人確認書類(一般的に身分証明書と言われることが多い。厳密には身分証明書という書類は市区町村が発行し、禁治産者などでないことを証明するもの)として、「顔写真入り住基カード」は使えるといわれている。
しかし、実際の運用では「運転免許証」と「パスポート」が最上位の取り扱いである。(この本人確認書類で拒まれることはないと言い切れる)
銀行・郵便局などの金融機関などでは顔写真入り住基カードでほぼ足りるのだが、クレジットカードの発行・変更手続きでは別個運転免許証などの提示が求められることが多い。
市町村役場でも住民票の写しや戸籍の申請で、本人確認書類の提示を求めるようになっていて、こちらでも顔写真入り住基カードで大丈夫である。

この場合においても、顔写真の「ない」住基カードは本人確認書類としては使えない。

参考までに本人確認書類としては、

・運転免許証・パスポート(旅券)・運転経歴証明書(平成24年4月1日以降発行のもの。それ以前の運転経歴証明書は証明書としての効力は「ない」)
・在留カード・特別永住者証明書
というところが、ほぼどこでも使える本人確認書類である。

注意が必要なのはパスポート。旅券としては確かに記載しなくても通用するが、本人確認書類としては裏表紙にある「住所・氏名の記載欄」の記載をしないと使えない。
(手書きで住所を記入するのは、パスポートの他は協会けんぽや組合管掌健保・後期高齢者医療の健康保険証くらいである)

多少落ちるが、この辺も使われる
・写真入り住基カード
・福祉手帳・障害者手帳

顔写真がないので、複数の本人確認書類が必要となるが、これでも十分なところが多い。
・各種健康保険証・後期高齢者医療被保険者証
・各種年金手帳
・住民票の写し(これは市区町村で発行された原本が必要。さらにコピーしたものは無理)
・印鑑証明書(15歳未満では、市区町村条例で発行できないらしい)
・顔写真なし住基カード

かなり厳しいが、この辺も使えるかも。
・写真付きの社員証・学生証(学生証は卒業などで在籍年限をすぎると使えなくなるので、注意)
・住所や氏名が明記された顔写真入りの官公庁で発行の資格者証(危険物取扱者証は住所記載がないのでダメ、というところもあり、使える場は少ない)



○マイナンバーの準備としての「マイナンバー通知カード(以下通知カード)」について。

・発行の前段の手続きについて
2015年頃からあらためて12桁の数字があらためて住民票コードとはまったく別個に、割り振られたとのこと。
これを受けて、2015年9月現在に住民登録をしている人及び在外カードを持っている人に、市区町村が地方公共団体情報システム機構に委託をして、通知カードを作成し、発行することになった。この番号は、同一世帯だからといって連続した番号になることはなく、まったく関連性のないランダムな番号が割り振られる。でも、重複付番など行われたらしい。(最後の桁の番号は、この手の番号ではよく設定されるチェックデジット(その前までの数字を元に、ある種のルールに従って決められる数字)である)

通知カードの情報は、地方公共団体情報システム機構から国立印刷局に送られ、通知カード・マイナンバーカードの申請用紙・2次元バーコード(QRコード)や申請書番号など記載したものと、郵送するための宛先を印字したものを作成し、市区町村へ送付された。これが10月から12月中旬までかかった。
わざわざ国立印刷局で印刷をしたのは、よくきちんと見ないと分からないのだが、通知カードには紙幣と同じように「すかし」が入っているからである。
郵便局を困らせたのは、この通知カードの宛先の文字が「小さめのフォント」で印字されたためである。一般に使われる10ポイント前後のものではなく、6ポイントくらいの小さい文字で住所が表記されていたのである。これを、世帯ごとに1通、転送不要(郵便局への転居届があっても転送されない)の簡易書留で送られた。このため、受け取るときに配達員も受取人も目をしばしばさせて懸命に宛名を確認する光景がたくさんあったようである。
宛先が見づらいということは、結果として異なる隣などの住人への誤配を招いたらしい。不達であるとの市区町村の問い合わせで発覚することは、全国でかなりの数にのぼった。

・通知カードの利用の範囲
これはあくまでマイナンバーを通知するだけのためのカードである。確かに、住所・氏名・生年月日が明記されているが、本人確認書類としての価値はない。
この通知カードに表記されている12桁の数字について、官公庁や金融機関(証券・投資信託を持っている場合に限る)で、手続きが必要なったり、マイナンバーの提示が必要と連絡をされた場合、その番号を書類に転記し、さらに通知カードの窓口への提示かコピーの添付が必要となるだけである。
2016年3月現在、マイナンバーの記載や提示が必要な手続きは、官公庁では健康保険や年金・障がい者申請とか更新など、いろいろあるので、窓口であらかじめ確認した方がいい。
ただし、意外と使わなくても何とかなる申請が多い。住民票の写し・戸籍謄抄本の発行とかの申請では不要である。
勤務先からマイナンバーの提示を求められた方も多いが、これは平成28年度の扶養者などの申告(扶養者がいない場合も必要)で必要となるからである。これは、国税庁に申告するものである。でも、同じ申告なのだが直近は平成27年度ということなので確定申告では、マイナンバーの記載は不要である。
金融機関でもマイナンバーの提示を求められることがある。これは、株式・投資信託などの取引について国税庁へ金融機関が申告するため、必要となる。ただし、取り急ぎ必要なのは新規口座開設・変更に限られ、3年間の猶予があるので、まだ提示を求められない金融機関が多い。
また、金融機関でも預貯金のみの場合は、口座開設も含めて現時点(2016年3月)ではマイナンバーの提示は求められない。マイナンバーが漏れたり、提示を要求したり、といった話は詐欺であるので、注意が必要。当該金融機関(銀行など)や警察への連絡をした方がよい。

通知カードの受け取り拒否や提示をしないということは、法令での禁止行為ではあるらしいが、罰則規定はない。このため、対応する人や部署が困るだけにとどまる。
ちなみに、マイナンバーを掲示・流出したり、必要もないのにマイナンバーを聞き取ったりメモしたりするのは、禁止行為であり、罰則規定があるらしいので、行ってはならない。
マイナンバーは「個人番号」として住民票の写しに申請により掲載することはできる。ただし、マイナンバー不要の申請で個人番号入りの住民票の写しを提出すると、個人番号部分を「切り取る」ように指示するところもあるので、必要に応じて対応すること。(それだけ、企業などの側ではマイナンバーの取り扱いには慎重なのである)




○マイナンバーカードについて

マイナンバーカードの発行は、通知カード添付の申請書を用いて行う。写真(45×35mmなど条件がある)の貼付が必要。提出日記入・署名捺印をして同封の返信用封筒にて送付すれば完了である。昨年末までに申請した人は2016年2月から3月くらいにマイナンバーカードを受け取れる。それ以降の申請だと、おおむね3か月程度かかるらしい。
マイナンバーカードの申請は、パソコンやスマートフォン、街角にある証明写真機の一部でも行える。この場合、通知カードなどの書類の下部や申請書部分にある申請書ID(マイナンバーとは違う。23桁の番号)を入力し、必要な情報を入力して、申請することができる。この場合、写真はパソコンやスマートフォンにある映像情報(ピクセルとか情報の大きさなどの制約はある)を使って行う。証明写真機の場合は、写真撮影の代金(1000円程度)は別途必要。
ちなみに、マイナンバーカードの新規発行では手数料無料である。再発行では、手数料が1000円かかる。
この申請書IDを誤ってマイナンバーと誤解してスマートフォンなどで申請する人が発生し、存在しないマイナンバーで複数発行されるというミスが発生したとのこと。

マイナンバーカードの受け取りは、市区町村役場の本庁かかつての町村役場の窓口で行う。近所にある住民票の写しなどの証明書発行場所では取り扱っていない。
(マイナンバーのネットにつながっているパソコンを用いて、手続きをするから)
マイナンバーカードの申請書にチェックを入れなかった人は、無料で勝手に電子証明書も設定される。
このため、受け取る際に暗証番号(数字4桁、3つあるがまとめて1つでもいい)とパスワード(英数字混じり6桁以上16桁以下、英字は大文字に限る)を設定しなければならない。
高齢者などは、この暗証番号・パスワード設定で面食らうことになる。(そりゃ、もうたくさん見かけましたよ)

マイナンバーカードの受け取りでは、葉書で受取書が送付される。市区町村によっては、封書で手続きなどを記載した書面をいれて送られる。これは転送不要の普通郵便で送られる。
表面に受け取る市区町村の窓口と保護シール、裏面上部に受け取ったことを確認したという住所・署名及び捺印欄がある。裏面中段以降は「代理人が受け取る場合」に記載する欄なので、記載しなくてもよい。
マイナンバーカードを代理人で受け取る場合は、病気など(診断書の同封が必要)や長期出張(勤務先の証明書(代表者印が必要)多忙という理由では不可)に限られる。このため、代理人は親族と限定はしていないが、事前に申請書に添付書類を付す必要がある。さらに、受取書に代理人及び本人の記入・捺印と暗証番号・パスワードの記入、本人及び代理人の本人確認書類(原本に限る)が必要である。暗証番号・パスワード設定の部分は葉書表面に貼付されていた保護シートを貼付しなければならない。(通常保護シートは不要)
夫婦だからといっても、本人確認を厳格に行うため、代理してマイナンバーカードを受け取ることができない。
未成年についても、本人確認書類を持って、本人がマイナンバーカードを受け取らなければならない。この場合、親権者の同伴をすることが求められる。

マイナンバーカードを受け取る場合は、本人確認書類の提示が必要である。また、住基カードを発行している場合は、それを同時に返納する必要がある。
本人確認書類だが、

住民基本台帳カード(写真付きに限る。)・運転免許証・運転経歴証明書(交付年月日が平成24年4月1日以降のものに限る)・旅券・身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳・在留カード・特別永住者証明書・一時庇護許可書・仮滞在許可書のうち1点

上記の書類をお持ちでない方は、「氏名・生年月日」または「氏名・住所」が記載され、市区町村長が適当と認める2点

(例)健康保険証、年金手帳、社員証、学生証、学校名が記載された各種書類、預金通帳、医療受給者証

…小学生以下はどうするのだろう。健康保険証はあるが、あと1つが大変なはず。
たとえば、北海道苫小牧市の場合、小学生はスポーツ施設利用者証でも可能、とのこと。幼稚園児・保育園児・乳幼児はどうするんだろう?
ここにあらかじめ考えておく必要がありますし、あらかじめ受け取る市区町村のマイナンバー窓口に問い合わせた方がいいです。
(仕方ないから住民票の写しということになるのかな)

マイナンバーカード受取の手続きは、パソコンを介して行われる。困ったことに、このネットへのアクセスが、処理量が多いためなのか、うまく行かず、短くても20分程度、長ければ2時間以上待ちになることもあるらしい。(2016年3月上旬あたりの情報。場所によってはもっと時間がかかる事例もあるかも)
そこで、あらかじめ暗証番号・パスワード設定を別紙に記入してもらい、手続きを終了次第、郵送にて送付するという取り扱いをしている市区町村が多い。
ただし、本人確認郵便(特殊)という形態で送付されるので、意外と面倒。
一旦郵便局から郵便物が送付される。その封筒には「受取番号」「配達日」「住所」「氏名」などが記載された書面が入っていて、それを見ながら配達郵便局に電話またはファックスをして、受け取りできる日時を連絡する。この場合、電話では同居の夫婦・子どものものであっても、それぞれ別個に電話口にでて、いちいち聞かれた項目を答える必要がある。
さらに、受け取りの際には「本人確認書類」の提示が必要。(これは、健康保険証などでも1つだけで大丈夫)
(これでも、郵便局への出頭をして受け取るというもの(そんなのもある)よりは楽)

マイナンバーカードは、表面・裏面の一部が隠れるような薄く透明なフィルムケースに入れられて渡される。
なぜ隠すかは、その部分を見れば分かるはず。(臓器移植に関する記載欄とかマイナンバーそのものだったりする)

まあ、これだけいろいろやって手に入れるマイナンバーカードであるが、たぶんその手続きの面倒さもあって、使われないんだろうなぁ…たぶん。


○マイナンバーカードの使用事例

・e-tax

住基カードの電子証明書とほぼ変わりません。
これまで使ってきた納税者番号に、新たにマイナンバーカードにある電子証明書に変更する手続きをしておけば、同じように使えます。
手続きについてはe-taxのサイトを参照のこと。
パスワードは、書類(手続き)が作成でき、マイナンバーカード(ICカード)をパソコンに接続して、アクセスするときに必要になります。
この場合、納税者番号のパスワードと間違えないようにすること。
また、住基カードのパスワードと異なり、英字は大文字なので、入力時には注意が必要。

この辺は、地方税も同じ感じ。(これまた、ソフトが違うらしいが)
法務局への電子申請も似たような感じ、とのこと。(印紙税がかからないとか手数料が若干だが安いというメリットもある)

・特許庁への電子申請

特許・実用新案・意匠・商標の登録申請をする場合、事前に手続きが必要ですが、マイナンバーカードの電子証明書があれば、電子申請ができます。
e-tax同様に専用ソフトのインストールが必要ですし、プログラムを立ち上げたら、暗証番号・パスワード(住基カードの電子証明書のようにパスワードだけではない)の入力が必要です。
かつ、マイナンバーカードをパソコンに操作中ずっとつないでなければなりません。
出願料の他に、(書面の場合必要な)電子化手数料という妙なお金が出ることもありません。

・本人確認書類として

住基カードと基本的に変わりないです。住基カードと違ってほぼ運転免許証・パスポートと同じように使えます。
ただし、マイナンバーの提示が不要な場合は表面(顔写真がある方)だけを見せる・コピーをするだけで十分です。
(jpegなど映像情報として送付する場合も、同様)
運転免許証のノリで裏面を見たりコピーしようとする対応者もいそうな気がしますが、やらせてはいけません。

ただし、官公庁や金融機関では、マイナンバーの提示が必要なので、両面の確認をしてもらう必要があります。

・ICカードとして

まだ、かつて市区町村で行っていたことがある証明書の発行やポイントカードとして使う、などは、ほとんど行われていません。
ただし、IDカードとして使われる場合、暗証番号の入力を求められることになるようなので、使う可能性がある人は、暗証番号をお忘れなく。
そうそう。かつての住基カードと同様に転出入をする場合は、市区町村役場で転入時のみ手続きが必要という「特例」が認められております。
この手続きの時、暗証番号が必要になりますので、ご注意のほど。
ちなみに、住所変更をした場合、住基カードは裏面の欄に記載・公印捺印でしたが、マイナンバーカードは表面に変わりました。



以上。




2016年3月16日初出


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